河内春人、倭の五王 - 王位継承と五世紀の東アジア 、中公新書、2018.1.25

解説:倭の五王とは、中国史書『宋書』倭国伝に記された讃・珍・済・興・武を言う。邪馬台国による交信が途絶えてから150年を経て、5世紀に中国へ使者を派遣した王たちである。当時、朝鮮半島では高句麗・百済・新羅が争い、倭もその渦中にあった。本書は、中国への接近の意図や状況、倭国内の不安定な王権や文化レベル、『古事記』『日本書紀』における天皇との関係などを中国史書から解読。5世紀の倭や東アジアの実態を描く。

 

目次 :

 

序章 四世紀後半の東アジア倭国「空白」の時代

1、百済との軍事同盟―七支刀は何を語るか

2、高句麗の飛躍、倭国の渡海―広開土王碑の真実

 

1章 讃の使節派遣一五〇年ぶりの対中外交

1、高句麗による倭国偽使―東晋の滅亡、宋の建国

2、四二一年、讃による宋への外交開始

3、倭国王冊封の意味―将軍府の開設と府管制の導入

 

2章 珍から済へ、そして興へ派遣の意図と王の権力

1、弟・珍の到来、官爵の要求―同盟国百済との競合意識

2、四四三年、済の登場―王統は移動したのか

3、済の再遣使と興の登場―不明瞭な王位継承

 

3章 倭王武の目指したもの激動の東アジアのなかで

1、四七八年の武の遣使―宋の低迷、高句への対抗

2、武による宋皇帝への上奏文

3、倭国の実態―上奏文が示す権力構造

 

4章 倭の五王とは誰か比定の歴史と記・紀の呪縛

1、五王と天皇―室町期から始まる比定の軌跡

2、比定の可能性と限界―音韻・字形・系譜の同一性

3、始祖王と五世紀の王権

 

終章 「倭の五王」時代の終焉世襲王権の確立へ

1、対中外交の途絶―なぜ派遣をやめたのか

2、倭王権の変貌―継体天皇の即位