篠田英朗、ほんとうの憲法、ちくま新書、2017.7

143, 戦後の日本の国家制度では、国民が主権者となり、国民が憲法9条を欲したことが「表」向きの建前である。しかし「裏」側では、憲法それ自体がアメリカ人が起草したものであり、国家の存在を支える安全保障はアメリカに委ねる仕組みになっていることを、エリート層は覚知している。

 

144, かつて大日本帝国憲法下では、「表」側の「主権者」天皇が、「裏」側で権力を行使する国家(エリート)に支えられている仕組みが維持されていた。日本国憲法下では、「表」側の「主権者」国民が、「裏」側で権力を行使するアメリカ及び日本国内のエリート層に支えられている仕組みが維持されている。

「押しつけ憲法」論が簡単には受け入れらないのは、それが「戦後日本の国体」の顕在化をもたらすことを、憲法学者が危惧しているからである。

 

 

目次

I ほんとうの憲法の姿

1章 日本国憲法をめぐる誤解を解く

1、立憲主義とは何か

2、現実に即して憲法を捉えなおす。

3、戦後平和構築として憲法を見る

4、国際法規範の実現として憲法を見る

5、英米法思想の系譜として憲法を見る

2章 日米関係から憲法史を捉えなおす

1、アメリカの影

2、大日本帝国憲法と戦前国体思想

3、日本国憲法と「戦後日本の国体」

II 抵抗の憲法学を問いなおす

3章 押しつけ憲法論への抵抗――歴史の物語を取り繕う憲法学

1、押しつけ憲法論をめぐる先鋭な対立

2、「抵抗の憲法学」における歴史のタブー①

3、「抵抗の憲法学」における歴史のタブー②

4、「国体」への沈黙

4章 国際化への抵抗――国際法と敵対する憲法学

1、国際法への敵対的姿勢

2、基本権思想と憲法優位説による自衛権理解

3、理想主義の国際法学者による安保合憲論

4、現実主義の顕密体制による国体

5章 英米法への抵抗――幻の統治権に拠って立つ憲法学

1、英米法における主権論

2、統治権という「抵抗」のための仕組み

3、憲法9条は統治権の問題ではない

4、錦の御旗たる「国民主権」は建前

おわりに――9条改正に向けて