遠藤乾、欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界、中公新書、2016.10.25

EU、ブレクジットのことがよくわかる、読みやすい良書。
イギリスが国民投票に踏み切ったのには、サッチャー以来の軋轢が保守党のなかにあって、
キャメロン元首相とボリス・ジョンソンの間以上の背景があることがわかった。
EUは、グローバル化を深化(1)利用・発展させる組織であったが、現在では、中間層の疲弊を招いている(2)。移民流入は、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可するシェンゲン体制にひずみをもたらした。ドイツは主導的立場を明確にするべきだがナチスのトラウマをいまだ抱えている。EUは年間17兆円も使っている。EUは国家主義や民主主義を一般的には否定するものである(3)。デモクラシーがデマクラシーに変質している。(1),(2),(3)がトリアーデ(調和的な関係)からトリレンマに揺らいでいる。

 

P131, 劣化したデモクラシーの否定的な側面をとらえ、池内恵は「デマクラシー」と喝破した。

P133,ハンナ・アーレント、全体主義の起源

 

目次

  1. 危機を生きるEU

    ユーロ―未完の危機、

    欧州難民危機、

    欧州安全保障危機―ウクライナからパリ・ブリュッセル・ニースへ、

    イギリスのEU離脱

  2. 複合危機の本質

    統合史のなかの危機―今回の危機は何が異なるのか

問題としてのEU、

なぜEUはしぶとく生き残るのか

  1. 欧州と世界のゆくえ

    イギリス離脱後の欧州と世界、

    危機の先にあるもの

 

内容紹介(AMAZON)

1993年に誕生し、単一通貨ユーロの導入など統合への壮大な試行錯誤を続けてきたEU(欧州連合)。だが、たび重なるユーロ危機、大量の難民流入、続発するテロ事件、そして2016年7月のイギリスのEU離脱決定と、試練が続いている。なぜこのような危機に陥ったのか、EUは本当に崩壊するのか、崩壊は何が引き金になるのか、日本や世界にどのような影響があるのか。欧州の直面する危機の本質を解き明かし、今後のあり方を考える。

 

内容(「BOOK」データベースより)

EUは崩壊するのか、それとも…?一九九三年に誕生し、単一通貨ユーロの導入などヨーロッパ統合への壮大な試行錯誤を続けてきたEU(欧州連合)。だが、たび重なるユーロ危機、大量の難民流入、続発するテロ事件、イギリスの離脱決定と、厳しい試練が続いている。なぜこのような危機に陥ったのか、EUは本当に崩壊するのか、その引き金は何か、日本や世界への影響は…。欧州が直面する複合的な危機の本質を解き明かし、世界の今後を占う。