大竹文雄、 行動経済学の使い方、岩波新書、2019.9.20
第1章行動経済学(Behavioral economics)の基礎知識
p5 プロスペクト理論(Prospect theory):確実性効果と損失回避
<不確実性下における意思決定モデルの一つ。 選択の結果得られる利益もしくは被る損害及び、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデル>
The prospect theory is an economics theory developed by Daniel Kahneman and Amos Tversky in 1979. It challenges the expected utility theory, developed by John von Neumann and Oskar Morgenstern in 1944, and earned Daniel Kahneman the Nobel Memorial Prize in Economics in 2002. It is the founding theory of behavioral economics and of behavioral finance, and constitutes one of the first economic theories built using experimental methods.
Based on results from controlled studies, it describes how individuals assess in an asymmetric manner their loss and gain perspectives. For example, for some individuals, the pain from losing $1,000 could only be compensated by the pleasure of earning $2,000. Thus, contrary to the expected utility theory, which models the decision that perfectly rational agents would make, the prospect theory aims to describe the actual behavior of people.
In the original formulation of the theory, the term prospect referred to the predictable results of a lottery. However, the prospect theory can also be applied to the prediction of other forms of behaviors and decisions.
< https://en.wikipedia.org/wiki/Prospect_theory>
p21 現在バイアス(bias):計画はできるのに、実行する時になると、現在の楽しみを優先し、計画を先延ばししてしまう対応。
P26 1タイプ:3週間後に3枚すべて提出。2タイプ:1週間ごとに1枚ずつ
3タイプ:自分で締め切り決定。 成績がよかった順は、2>3>1
p33 ヒューリスティックス(heuristic):直感的(近道による)意思決定
<「発見的」と訳される英単語(Heuristic)で、時間のかかる確実さよりも、経験則などに基づき、ある程度のレベルで正解に近いものを見つける方法>
p34- サンクコスト、意思力、選択過剰負荷・情報過剰負荷、平均への回帰、メンタル・アカウンティング、利用可能性・代表制ヒューリスティック、アンカリング効果、極端回避性、社会規範・同調効果、
p42プロジェクション・バイアス(投影バイアス):現在の状況を将来に過度に投影してしまい、未来を正しく予測できない。<過学習>
第2章 ナッジ(nudge)とは何か
p44 「ナッジ」は「軽く肘でつつく」の意味の英語。
p45 ナッジは、行動経済学的知見を使うことで人々の行動をよりよいものにするように誘導するもの。「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する」
p74 ハリケーン上陸で逃げない人に避難を促す効果的なのが「残留する人は身体にマジックで社会保障番号を書いてください」というメッセージだった。日本であれば「身体にマジックで住所・氏名を書いてください」「身元が確認できるものを身につけてください」
第3章 仕事のなかの行動経済学
p86 タクシー運転手は目標に到達すると仕事を止める確率が高くなる。<参照点(Reference Point)プロスペクト理論において利得と損失の判断を分ける基準点である。 意思決定者は参照点からの変化によって、損得を判断する。>
p88 バーディーパットでは、パーパットに比べて、ホールまでの距離より長いパットではなく、短いパット(ショート)を打ってしまうというミスをしがちである。<なぜ?>
p90 ピア(peer)効果(同僚効果):同僚が他の労働者の生産性に与える影響。
第4章 先延ばし行動
第5章 社会的選好を利用する
p120 イギリス企業での女性の取締役を増やすイギリス政府のナッジ、「FTSE100の構成企業の取締役に占める女性の割合は12.5%にすぎません」⇒「FTSE100の構成企業の94%、FTSE350の構成企業の3分の2以上に女性取り締まりがいます。」
p121 無断キャンセルを減らすナッジ、イギリスの病院「予約日時と予約番号を患者に自分で書き留めさせる」積極的コミットメント。
第6章 本当に働き方を変えるためのナッジ
p132 目標達成のための行動計画を立てる。
P138 習慣化できるルールを作る。
p140 長期の目標を達成するためには、その目標を達成するために、その時点その時点で最適な行 動をとるのがベストである。しかし、それがベストであることはわかっていても、ベストな計画が実行できないのであれば、次善の計画を立てることが必要である。
長期の目標を達成できるような毎日のシンプルな行動ルールを決めて、毎日その行動を達成したことを喜びにするという工夫が、非合理的なように見えるけれど、次善の策なのかもしれない。
第7章 医療・健康活動への応用
p144 利得メッセージ<損失メッセージ
p145 デフォルトの利用、オプト・イン、オプト・アウト
<ユーザーが情報を受け取る際や自らに関する情報を利用される際などに、許諾(パーミッション)の意思を示す行為を「オプト・イン(Opt-in)」という。反対に許諾しない意思を示す行為を「オプト・アウト(Opt-out)」という>
p164 互恵性メッセージや社会規範メッセージが有効。メッセージが複雑であると、ナッジとしての有効性が小さくなる可能性がある。
第8章 公共政策への応用
p198 O型の血液型が他の血液型よりも広範囲に輸血に使うことができることを知っているから、O型の人が献血しやすい。
日常に出会う例:
トイレのもう一歩前。「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」
ホテルのリネン交換「交換するときにカードをベッドにおいてください」