チャリング・クロス街84番地、ヘーレン・ハンフ著、江藤淳訳、中公文庫、1984。

文庫に加え映画や原書「84, Charing Cross Road」にも取り組み、静かな感動を得られました。 ニューヨークに住む本好きの女性作家とロンドンの古書店員との1949年10月からの20年に渡る90回ほどの往復書簡です。当初、戦勝国のイギリスも食料・物資が欠乏し、アメリカから缶詰などを送っています。恐る恐る古書を注文することから始まった作家の手紙は、親密な遠慮のないものになっていきます。一方、ロンドンからの手紙はあくまでも丁寧で、映画では実直な店員をアンソニー・ホプキンズが演じています。二人は直接会うことはありませんでした。作家の崩した英文は分かりにくいものもありますが、一つ一つの手紙は短く読みやすく、英文学の知識も得られます。翻訳された江藤淳さんも、きっとそこに惹かれたのでしょう。実話のようです。