加藤秀俊、社会学 - わたしと世間 (再掲)

加藤秀俊、社会学 - わたしと世間 (中公新書) 新書 – 2018/4/18
私淑している、加藤秀俊さんが、5年近く前に書かれた本です。行きつけの珈琲店で、常連の息子さんが、大学の社会学部に入学したので、彼に薦めるべく、再読しました。今さらながら、多くの人物・書籍が出てきます。それを頼りに興味が湧いた本を読み、ゆかりの地を訪ねるのが、楽しそうです。巻末の「中公新書刊行のことば(1962.11)」は加藤さんの文章です。
目次
第1章 「社会学」-現代の世間話
第2章 集団―つながる縁
第3章 コミュニケーション―ことばの力
第4章 組織―顔のない顔
第5章 行動―ひとの居場所
第6章 自我―人生劇場
第7章 方法―地べたの学問

一五〇年前に充てた安易な訳語のせいで、抽象的で理解しにくい「社会」と「社会学」。だが、社会とは私たちを取りまく身近な世間のことにほかならない。本書では、集団、コミュニケーション、組織、自我などのキーワードを切り口に、世の中の仕組みをよりよく知るこの学問の本質、方法を述べる。半世紀以上にわたり研究を続けてきた碩学による社会学入門にして、知的好奇心を持ちつづけ、人生を楽しむためのヒント。 出典:中央公論新社公式サイト

2018年4月27日のレビューamazon

豆知識が楽しい、いろいろな連想を拡げてくれる加藤節を久しぶりに楽しんだ。
「社会学」とは世間話とのこと。読書案内もあり、紹介されている本をいくつか読んでみようと思う。英語の勉強にも使えそうだ。ときに押しつぶされそうになる日々の中で、加藤さんの本に出会って30年、時々に救われてきたように思う。読者に自分でも何か研究できる、そして書ける、書かねばと感じさせてもくれる。巻末に1962年の「中公新書刊行のことば」がある。最近の中公新書には掲載されないのもあるけれど、加藤さんが書かれたそうだ。

以下、メモ (連想を書いて見ます。)
第一章、「社会学」-現代の世間学
P16,17:加藤さんの別著「メディアの展開」ででてきた江戸時代の識者に、またお会いしました。松浦清山、太田南畝、貝原益軒、等々。
P18<世間師、宮本常一>:武蔵野美大に研究室を設けていたそう。現在、美大で火・木の10:00から16:30まで資料館が開館。近所なので行ってみた。収集品がデザインのひな型になっているようだった。
P24<ホーボー「hobo」>:住所不定、あちこち放浪の旅をつづける浮浪者のこと。「ホウボウさまよう」の日本語のことばに発音が似ている。外国語と日本語でたまに語感が似ている言葉があるのは不思議。タイ語:カンサイ(左側)これは関西を連想。赤坂の食堂、外人さんが来ていたこともあり「蕎麦」と「サバ」を混乱気味であった。
P30<Barbara Ehrenreich: Nickel and Dimed, Henry Holt and Co. 2001 著者の下層社会での経験をそのまましるした名著>:読んでみたい。

第二章、集団―つながる縁。
P44<あんまりひどい縁だと「縁切り寺」。>、P49<ギターがじょうずなんだってね。>
P54<部長が定年退職、しぜんと疎遠になっていく。>、P56<バスケットボール部で合宿をかさねてきた友人。> と身近な例。
P47<米山俊直>:伊丹・西宮の大手前大学学長、淀川・琵琶湖流域委員会の委員もされていた。著者と共著の「新遠野物語」を読んだことがある。
P59<Erik H. Erikson: Childhood and Society. Norton. 1950 こどもが社会のなかでどう育っていくかを論じた名著>:読んでみたい。

第三章、コミュニケーション-ことばの力
P80<新聞の功罪、アメリカのハースト系新聞の捏造記事が、米西戦争をもたらした>。ベトナム戦争、イラク戦争、アラブの春、シリア内戦(戦争)も同根のように思える。
P87<梅棹忠夫、情報の文明学、中公文庫、1999 : 情報産業論>:を読んでみた。胚(embryo)、内胚葉産業・農業、中胚葉産業・工業、外胚葉産業・情報産業。エンゲル係数、お布施の原理。

第四章、組織―顔のない顔
P111<肥後守>:鉛筆を削るナイフの話を著者からお聞きしたことがある。
P113<国家という法人>:社会人のランク分けなど、管理されているのをこのところさらに実感。
P114<桜井徳太郎、講集団成立過程の研究、吉川弘文館、1962>:半年かけて読んでみたいと思う。

第五章、行動―ひとの居場所
P131<せまいながらも楽しい我が家>:「My Blue Heaven」なるヒット曲があった。
P138<アジール(居場所のないひとの居場所)独語>:
ゾミア(大陸部東南アジアにおいて、歴史的に低平地の人口集積地に基盤をおく政府による支配が困難であった巨大な山塊地域)を連想。ジェームズ・C・スコット、ゾミア:脱国家の世界史、2013、は大分の本だった。アサイラム(英語、ピッツバーグにサルマン・ラシュディ―などの亡命者の保護施設があるそうだ)。マルーン(中南米の逃亡奴隷がつくった独立地域)。
P139<てら銭、(寺銭)>:こういったミニ知識が得した気になる加藤節。

第六章、自我―人生劇場
P150等<椿姫、ボヴァリー夫人、修禅寺物語>:スマホで調べながら読むのが楽しかった。
P150<役割葛藤、役割移転>:サルトルの「実存は本質に先立つ(存在と役割)」、ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」を連想。
P155<シバイ(ハワイの英語)、振り付け、芝居>:「河原の芝生に腰をおろして演技を見た。」に由来とのこと。ミニ知識。

第七章、方法―地べたの学問
P178<アイオア州・トウモロコシ>:映画『フィールド・オブ・ドリームス』(Field of Dreams)を連想。
P180<菅江真澄>:秋田の博物館へ行かねばならぬ。
P182<イザベラ・バード>:行きつけのスタジオには本棚があり同書も置いてある。通して読むには大分。加藤さんの本、「紀行を旅する、中公文庫、1987」に要約されている。東京駅ステーションギャラリー回廊で展示会をしている。
P188<定性、定量>:例えば人口密度を調べて見た。小平市9千人。つくば市800人。東京の人口重心はこれからもっと東に移動していくそうだ。
P189<川喜田二郎>:津で出会う。百五銀行頭取・陶芸家だった川喜田半泥子のご親戚。川喜田半泥子の祖父、川喜田石水は札幌の名付け親、北海道で活躍した松浦武四郎のパトロンだった。

使える漢字に出会える。:彷徨(ほうこう)、矮小(わいしょう)。