室崎益揮・幸田雅治(編)、市町村合併による防災対策空洞化

室崎益揮・幸田雅治編著 市町村合併による防災対策空洞化

ミネルヴァ書房、2013

 

内容(「BOOK」データベースより)

既に批判がされている平成の大合併だが、実際に合併後の自治体では住民サービスの低下、住民との距離拡大など、団体自治及び住民自治の観点から地方自治劣化が懸念されている。そして東日本大震災では、市町村合併に伴う防災力低下により、発生直後の災害対応の脆弱性、復旧・復興段階における対応の困難性が指摘されている。本書では、住民の生命に関わる防災の観点から、平成の大合併の問題点を総括する。

 

第3章 市町村合併による震災対応力への影響 ―石巻市にみる大震災と大合併

幸田雅治P57-92 

石巻市は、平成1741日に旧石巻市、河北町、雄勝町、河南町、桃生町、北上町、牡鹿町の16町が合併し、新たな「石巻市」としてスタートした。石巻市は、合併によって大きな面積を抱えることになった自治体の一つである。全国市町村の平均面積は、平成11331日時点で114.8平方キロであったが、平成の大合併が終了した平成22331日時点では215.4平方キロ(市の平均面積は273.9平方キロ)となった。旧石巻市の面積の137.27平方キロから555.64平方キロと約4倍となり、500平方キロを超える大規模面積の基礎自治体となった。人口16826人(平成22年国勢調査)。高齢化率は27.8%(平成253月末現在)なかでも、雄勝・牡鹿エリアは、40%以上となっている。

平成23311日の地震により、旧石巻市は、高台を除く市中心部が津波に襲われ、2353人が死亡し、226人の行方不明者を出した。旧石巻市域の沿岸部の門脇町・南浜町地区は、約1,700世帯が住んでいた住宅地であったが、津波に流されるとともに大規模な火災が追い打ちをかけ、被害が拡大した。

石巻市は、この東日本大震災においては、3242名の死者、465名の行方不明、計3,707名(人口比2.28%)という甚大な人的被害を受ける(平成249月末)とともに、平野部の約30%、沿岸域の73平方キロが浸水し、被災住宅は全住家の約7割の53,742棟、うち約4割の22,357棟が全壊(平成2310月末)となった。震災後の最大避難者数は約5万人、避難箇所は250ヵ所となった。石巻市役所の職員は48人が亡くなった。

 

平成の市町村合併 (室崎益揮・幸田雅治編著、市町村合併による防災対策空洞化p57

平成117月に市町村合併特例法が改正された。それまでの合併特例法にはなかった普通交付税の算定特例(合併算定替)の期間延長や合併特例債の創設などの財政措置の拡充策が盛り込まれて、合併を促進する国の方針が明示されたといってよいであろう。このようにして、平成の大合併がスタートしたのである。平成1141日時点で3,229あった市町村は、同法の当初の適用期限であった平成1741日には、2,395市町村となった。さらに、上記の改正法は、経過措置により一年間延長され、その効果があって、平成1841日には、市町村数は1820にまで減少した。さらにまた、同法の期限が切れた後も、新しい市町村合併特例法(いわゆる合併新法)の下で合併政策は継続され、平成22331日時点で、1,727市町村となった。かくして、平成の大合併で、市町村数は53.5%とほぼ半減することとなった。

 

Netより、

平成の大合併とは、市町村の合併の特例に関する法律(合併特例法)(平成16年法律第59号)に基づき、19994月から20103月までに行なわれた市町村合併の総称。

2005年前後に最も多く行われた。19993月末の市町村数は3,232(市:670、町:1,994、村:568 だったが、20103月末には1,728(市:786、町:757、村:185)とほぼ半減した。

 

目次

1 市町村合併と防災力

1章 東日本大震災における市町村再編災害

2章 自治体の合併と防災対策の動向―合併すれば地域防災力が高まるわけではない

3章 市町村合併による震災対応力への影響―石巻市にみる大震災と大合併

4章 市町村合併と災害対応―2011年台風12号災害

5章 復旧・復興財政支援と被災合併自治体

2 市町村合併と絆

1章 防災の原点としての自治と連携

2章 地域・自治概念の再検討

3章 原発災害市町村はどのように行動したか

4章 平成大合併と地域コミュニティのゆくえ