ハンス・アルバート・アインシュタイン、彼の生涯と私たちの思い出

ハンス・アルバート・アインシュタイン「彼の生涯と私たちの思い出」2015年6月25日1版1刷発行。技報堂出版。(原著は1991年)

エリザベス・ロボズ・アインシュタイン著。ロナルド・W・クラーク序文。中藤達昭、福岡捷二訳

相対性理論で有名なアインシュタインの息子で、時代をリードした水理学者のハンス・アルバート・アインシュタイン(1904.5.14-1973.7.26)の伝記。「彼の生涯と私たちの思い出」とのことで、奥さんが書かれた伝記の翻訳。

目次

第1章 序章

第2章 幼少時代と家族背景(一九〇四‐一九一四)

第3章 少年期から中年期の時代(一九一四‐一九五八)

第4章 エリザベス・ロボズ・アインシュタイン

第5章 二人の生活(一九五九‐一九七三)

第6章 終章

付録B:ハンス・アルバート・アインシュタインの水理学への貢献についての個人的な感想  ウォルター・H・グラフ著より、

P117:

1950年の研究論文、The Bed Load Function for Sediment Transport in Open Channel Flows 〈開水路流れにおける土砂輸送の掃流砂関数〉は、河川水理のあらゆる知識を統合したものと言えます。

付録C:ハンス・アルバート・アインシュタインの水理学への貢献

シェ=ウェン・シェン著より

P122:

ハンス・アルバート・アインシュタインは、全流砂量は微細粒子の流砂量と河床構成材料からなる流砂量に分割して考慮されるべきであると提案しました。

Einstein.H.A., A.G. Anderson and J.W. Johnson. 1940. A distinction between bed load and suspended load in natural streams. Transactions, American Geophysical Union 21: 628-633.

P122:

洪水管理のひとつの重要な要素は、河床抵抗の関数による洪水水位の予測にあります。ハンス・アルバート・アインシュタインは流体力学の原理に基づいて、表面抵抗と形状抵抗を分けて導入しました。彼は河川の河床波の表面抵抗は、管路流の表面抵抗として扱うことができると仮定しました。彼は実験と実測資料から、形状抵抗は流砂量の関数であると規定しました。彼の形状抵抗と表面抵抗を決める手順は完璧ではありませんでしたが、今日使われている一般的なアプローチは、依然として、彼の手法を受け継いでいます。多くの研究者はハンス・アルバート・アインシュタインの手法を修正しようと試みましたが、残念ながら、完全に満足のいく方法は未だに見つかっていません。世界中の多くの洪水防御プロジェクトはハンス・アルバート・アインシュタインの河川流路の抵抗解析に基づき、成功裏に設計されてきたのではないでしょうか。

Einstein. H.A. and N.L.Barbarossa. 1952. River channel roughness.Transaction. ASCE 117: 1121-1146.

Alam, A.M. and J.F. Kennedy. 1969. Friction factors for flow in sand-bed channels. Journal of the Hydraulics Division, ASCE 95(HY6): 1973-1992.

Engelund, F. and E.Hansen. 1972. A Monograph on Sediment Transport in Alluvial Stream. Copenhagen: Teknisk Forlag. 82.

Lovera, F. and J.F. Kennedy. 1969. Friction-factors for flat-bed flows in sand channels. Journal of the Hydraulics Division, ASCE 95 (HY4): 1227-1234.

Shen. H. W. 1962. Development of bed roughness in alluvial channels. Journal of the Hydraulics Division, ASCE 88 (HY3): 45-58.

P122:

ハンス・アルバート・アインシュタインは、おそらくアメリカ合衆国土地保全局技術報告書1026(1950)に記された掃流砂関数の開発で、最もよく知られています。この掃流砂関数は数々の重要な概念と手法を導き出しました。最初に、掃流砂の運動は、全抵抗ではなくて表面抵抗とつながる局所的せん断応力と関連するべきだと明示したことです。そして第二に、掃流砂礫の運動を記述するにあたり、確率論的なモデルを使用しはじめたことです。ハンス・アルバート・アインシュタインの確率論的モデルは均質なポアソン過程に基づいていました。これに続く多くの流砂運動を表す確率論的モデルはハンス・アルバート・アインシュタインのポアソン・モデルの変形だと考えられます。ハンス・アルバート・アインシュタインの掃流砂モデルは、今でも異なった大きさの河床材料の動きの相互干渉を考慮した唯一の利用可能で包括的な解析手法です。ハンス・アルバート・アインシュタインの有名な掃流砂関数は実際に適用され、世界中で掃流砂量と浮遊砂量の計算に使われています。

Shen. H. W. and C.S. Hung. 1971. Appendix. In River Mechanics, Vol. II. ed.

H.W. Shen. Water Resources Publication. Volume 1: The Early Years. 1879-1902. Princeton. N.J. Princeton University Press.