守田優、地下水は語る―見えない資源の危機

守田優(もりたまさる)著、地下水は語る見えない資源の危機、岩波新書、2012.6.20

2016.6.17 memo

昨年から、職場の近く、東京の都市河川の源頭部に当たる、小平市に住み始めました。玉川上水や野火止用水、さらには、国分寺崖線にある野川の源流、石神井川、仙川などを探訪する機会があります。玉川・野火止用水では、東京都が下水の3次処理水を流す清流復活事業を行っています。西武線・東村山駅近くの野火止用水の始まるあたりでは、ザリガニとりに興じる子供の姿が絶えません。半地下になっているJR武蔵野線・新小平駅は、つくば方面に出かける際によく利用します。この新小平駅で1991年10月に起こった浸水も先日知りました。小平市の雨水排水は、主に合流式下水道に頼っているようです。お隣の小金井市では、雨水浸透事業が精力的に展開されているそうです。

上野駅や東京駅の地下水による浮き上がり現象も起こっていることも最近知りました。同書P144には、2004年から東京メトロ日比谷線の地下鉄湧水を渋谷川・古川に流して、平常流量の確保と水質改善に活用する事業も始まったとあります。京都市では、地下鉄東西線により地下水の流動阻害が起こったそうです。環状7号線地下調節池や東京外廓環状道路も同様の問題が心配されましたし、心配されています。

 

日本の高度成長時に起こった地下水の過剰組上げと地盤沈下についての総括的な整理を与えてくれるのに、加えて、アメリカ中央部のオガララ帯水層の過剰くみ上げ、地下水くみ上げによるバンコクでの地盤沈下などなど、世界的な視野も与えてくれます。20年以上前にチュニジアに水資源の調査に行ったときに、お会いした日本国大使が、隣国リビアのカダフィ大佐が当時進めていた、砂漠の化石水をトリポリにひく事業をたいへん心配しておられたのを思い出します。

 

平成26年に施行された水循環基本法についても触れています。北多摩のこともよく分かりますし、GLOCALな視点に立っており、たいへん感銘を受けました。

 

目次

1章 沈む大地

(沈み行く東京、地盤沈下と地下水、東京ゼロメートル地帯、地盤沈下の現在)

2章 涸渇する名水

(都市をうるおす湧水、井の頭池はなぜ涸渇したか、水循環不全という地下水障害)

3章 地下水と日本人

(湧き水と井戸、井戸掘削の技術革新)

4章 環境としての地下水

(有機塩素化合物による汚染、地下水が地下駅を持ち上げる、地下鉄道が地下水を堰き止める)

5章 地下水とどう付き合うか

(地下水は誰のものか、「公共の水」としての地下水、地下水の将来)

 

上のこととの関係として、

先日、知人から初の水循環白書が国会報告されたことを教えてもらいました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/mizu_junkan/h27_mizujunkan_shisaku.html