東京大学都市デザイン研究室、図説 都市空間の構想力、2015/09/15

図説 都市空間の構想力

東京大学都市デザイン研究室/編 西村幸夫、中島直人 他著、2015/09/15  

 

メモ:

1章 大地に構える。 水防と暴風の備え。

P53:木曽川の中州に形成された岐阜県各務原市川島町では、水害への応答の工夫が凝らされた、密度の高い集落形態を見ることができる。幅員の狭い路地に沿った各敷地は、「ごんぼ積み」と呼ばれる丸石を重ねた基壇によって底上げされるとともに、敷地内への入口を限定し、道に沿って家屋の外壁が巡らされるなど、徹底した工夫が見られる。まちの基盤となる微地形が計画的に生み出された事例である。

<ネットの記述に以下がありました。>

ごんぼ積みとは石垣の積み方が「ごぼう」を積み上げた断面に似ているからそう呼ばれていると言われます。

 

4章 全体を統べる。二重の基軸を曳く

P105:時代とともに平行に基軸が積み重なることもある。宇都宮市街地は、中世以来、二荒山神社を核とした宗教都市として育まれていたところに、近世、都市秩序の核として新たに城郭が設けられた。加えて、神社と城郭を結ぶ南北の街路が導かれることで、中世と近世の核を結ぶ一つの軸が生まれた。さらに、近代の都市秩序の核として県庁舎が設けられると、これに平行して、県庁を望む南北のヴィスタ軸が形成され、さらには、戦災復興土地区画整理事業によってさらに強化された。この新都市軸の南端に市役所が設けられることで、近代と現代の核空間が結ばれた。つまり、平行する中世―近世の軸線と近代―現代の軸線の協演が、都市の中心性を高めているのである。

 

6章 時を刻む 「地」を受け継ぎ、復する思想

P171: 東京西郊を流れる野川は、武蔵野台地の縁をなす国分寺崖線からの豊富な湧水を集めながら、周辺に広がっていた農村を潤していた。戦後の都市化の中で、治水のための護岸改修が進められ、一時は生活排水が流れ込む都市河川と化した。近年は水質の改善が進むとともに、市民を中心に「ハケ」と呼ばれる崖線の自然を守る取り組みが進められ、多自然工法による河川整備と、そこから水を引き込んだ調整池におけるビオトープの創出、田んぼの復元、それらの保全活動により、多様な生き物を育む風景が再生されつつある。

 

<ネットでの同書の紹介>

建築・都市デザイン、都市計画・まちづくりの出発点となる一冊

乱雑に見える無名の風景にも意図があり物語がある。それを読み解くことは、すでにそこにある都市空間をより良くしていくための最大の武器となる。丹下健三が開き西村幸夫が率いる東京大学都市デザイン研究室が、10年の歳月を費やしてまとめたデザインの拠り所。

 

目次

・序章 都市空間の構想力とは何か

 都市空間の構成の背後にある構想力を読み解く

 構想力を読み解くための六つの視点

 

1章 大地に構える

 地形が都市を呼び寄せる

 地形を生活に取り込む

 地形が領域を生み出す

 

2章 街路を配する

 都市を編み上げる

 街路を場所として設える

 

3章 細部に拠る

 個のうちに全体を込める

 個を都市に開く

 細部に都市を纏う

 

4章 全体を統べる

 都市に大きな物語を配する

 小さな物語を重ねて大きな物語を紡ぐ

 背景に隠された物語に乗ずる

 

5章 ものごとを動かす

 地形への特化が行為を固有化する

 ハレの場を演じる

 空間の様式が継承を支える

 構想力が、今を歴史的な時間にする

 

6章 時を刻む

 移ろいを映し出す

 記憶を重ねる