ポール・ブルースタイン、IMF 世界経済最高司令部20ヶ月の苦闘

メモ:

P255:

SDRM(ソブリン債券返済メカニズム)

大きな負債を抱えて市場がパニックを起こした国で、IMFが資本流出を止めることができる。実際には、その国が海外の債権者への支払いを停止し、資本流出を規制するという決定を行い、IMFがそれを承認する。もちろん、当該国はまずIMFに打診しなければならず、経済のファンダメンタリズムの問題を修正し、債権者と誠実に交渉することを示めす必要がある。

P258:

新興諸国に流れていく資金が減るのではないかとの懸念に関しては、1998年9月にマレーシアが資本規制を実施して世界を揺るがしたあとに、何が起こったかを見るといい。米財務省とIMFは、マレーシアはその罪に対して悲痛なほどの代償を払うことになるだろうという恐ろしい予測をしていた。だが、その後同国の経済は順調だった。マレーシア政府は国際市場で大型の債券発行を行ったのだ。言い換えれば、世界の金融機関は利益獲得の機会があるならば、財産の尊厳行為は見逃して、資金を提供するということだ。また、たとえばSDRMが新興諸国投資への熱意をさますとしても、提供する資金の額が減り、コストが上がるだけならば、1990年代半ばに起こったことと比べると悲劇ではない。

 

ポール・ブルースタイン著、東方雅美訳、IMF 世界経済最高司令部20ヶ月の苦闘、2013.12.2, 楽工社。

原著: Paul Blustein The Chastening, 2003

 

上巻目次 *主要登場人物紹介   *IMF組織図・用語解説 

第一章 世界救済委員会 

第二章 開かれた蛇口 ──IMFという組織。危機の始まり 

第三章 プーさんと大きな秘密 ──タイ 1997年7月~8月 

第四章 悪性腫瘍  ──インドネシア 1997年10月~12月 

第五章 ソウルの眠れぬ夜 ──韓国  1997年10月~12月 

第六章 反対論者 ──IMFに反論した人々 

第七章 掌帆(しょうはん)兵曹 ──韓国 1997年12月 

 

下巻目次 *主要登場人物紹介 

第八章 泡と消え去る ──インドネシア 1998年1月~4月 

第九章 突き付けられた「ニエット(ノー)」 ──ロシア 1998年7月~8月 

第十章 リスクのバランス ──米国 1998年8月~9月 

第十一章 どこまで深いのか ──米国 1998年9月~10月 

第十二章 ようやくにして脱出 ──ブラジル 1998年10月~1999年3月 

第十三章 危機から脱したあとに 

   *あとがき・謝辞 *その後の本書関連事項 *下巻注