ティモシー・F・ガイドナー、ガイドナー回顧録、日本経済新聞出版社、2015.8.21
ティモシー・F・ガイドナー、ガイドナー回顧録、日本経済新聞出版社、2015.8.21
ニューヨーク連銀総裁、オバマ政権初の財務長官として、大恐慌以来最悪の金融危機対応の最前線に立ってきたガイトナーが、ベアー・スターンズ救済、リーマン破綻、AIG救済など、怒濤の出来事を政権内部の視点から赤裸々に語る。全666ページ。
目次:
海外に出たアメリカ人
危機で学んだこと
逆風に立ち向かう
燃えるにまかせろ
崩壊
「私たちはこれを解決します」
火中へ
計画は無計画に勝る
状況は改善、気分は最悪
改革を目指す戦い
余震
金融危機を回顧する
先日来の、ポールソン回顧録に続いて、オバマ政権初の財務長官を務めたガイドナーの回顧録を読み始めました。最近の世界の経済状況が語られていて、この分野の素人ととしては、ミステリーを読むようで、まことに面白いです。
最初の方で、日本への金融開放について、働いたことが述べてあります。こういった人が活動して、現在の外資の侵入状態にいたっていることが想像できます。親父さんが、アメリカの海外援助庁で働いていたことは、私の仕事に近いこともあり、あれあれです。
ガイドナー回顧録P238:
イギリスの金融システムが国の経済に占める比率は、アメリカの5倍だ。(2008年、日本は何倍なのだろう。?)
ガイドナー回顧録P252:
たしかに、経営に誤りのあった保険会社に、国の基礎科学研究予算3年分を貸したことは否めない。(2008年9月のAIG救済、40+140+230億ドル)
ガイドナー回顧録P345:
舞台裏では、オバマ大統領も私も、人民元を切り下げるよう中国に容赦なく圧力をかけていた。そして、強い元は中間層の購買力をのばすから、中国自身の利益になるということを、やがて説得できた。オバマ政権第一期のあいだに、人民元は実質で16%切り上げられ、中国の経常黒字は半減して、アメリカの企業と労働者は大きな恩恵をこうむった。
ガイドナー回顧録P531:
アメリカの銀行の規模を制限するという、デラウエア州選出のテッド・カウフマン上院議員の提案を私たちは支持しなかったが、その代案として議会は、銀行が金融安定に重大な脅威となった場合に分割を強制できる能力を監督機関にあたえた。一行集中を制限するという私たちの提案も盛り込まれた。システムの負債の10%以上が一行に集中するような吸収合併が、それによって防止される。現在、アメリカの最大手銀行は、2007年当時より規模が拡大している。危機のイーハーモニー段階で私たちが無理やり結婚させた当然の結果だった。それでも、アメリカの経済規模からすれば、外国の銀行よりもずっと規模が小さいし、一行に集中してはいない。アメリカの銀行資産はアメリカのGDPとほぼ等しいが、ドイツの銀行はGDPの3倍、フランスとスイスの銀行はGDPの4倍に近い。イギリスの銀行はGDPの約8倍だ。
P604:
私の決め台詞。“それを考えるのに正しいやり方だとは思わない。計画は無計画に勝る。 人生では代案が肝心だ。私はあとの痛みよりも今の痛みを選ぶ。信じられねえ。彼の確信は知識に比べ行き過ぎている。希望は戦略ではない。まっぴらごめんだ。”
(英語の原文を見てみたい。)
P606:
1988年に初めて財務省に勤務しはじめたときに採用した、ルール。
「物事にただ反対するのではなく、本質的に賛成する」
「鈍才、見栄坊、不平屋は雇わない」