三浦展、東京田園モダン ―大正・昭和の郊外を歩くー、  洋泉社、201609 

を小平図書館で借りて読みました。著者の三浦さんは、たくさんの東京の都市ものを書いています。小平図書館にもたくさんあります。仕事にも少しばかり関係しますし非常に面白いので、他の著書も読んでみようと思います。埼玉県大宮市の盆栽村にもいったことがあります。1923年の関東大震災のあと、植木屋さんたちが駒込から集団移住したとのこと。気分のよい町でした。

みうら・あつし 58年生まれ。消費社会研究家。『スカイツリー東京下町散歩』『人間の居る場所』など著書多数。とのこと。同世代です。

 

あとがきがいい。私淑している社会学者の加藤秀俊さんのグループと同じ嗜好を感じる。

あとがき:人間史としての都市史

最近、私は調べ物が好きだ。若い頃は調べるよりも考えることが好きだった。でもそれは当然なことで、若い頃は頭の中に具体的な知識が少ないから、抽象的に考えるしかない。年をとると具体的な知識が増えるから、あまり抽象的に考えなくなる。

考えてもいいのだが、知識が増えすぎると、やはりどうしても、それらを抽象的な思考にまとめ上げるのは凡人には不可能になる。だからあんまり考えすぎることは諦めて、あくまで具体的なことを調べ続けること自体が喜びになるのだろう。それに考えたことより現実に起きたことのほうが多様であり、かつそれらが想像を超えたつながり見せてくれる。調べることがファンタジーになるのだ。

だから調べものにはきりがない。あることを調べると、別のあることがわかり、それと関連してまた別のことが調べたくなる。特に近年はインターネットで検索をすると、あっという間にいろいろな情報が目に入ってくるのできりがない。本書が取り上げた地域でも、注目する資料が異なれば、まったく別の本を書くことができるだろう。

それでも私が調べたいことは、まだインターネットには出ていないこともひじょうに多い。そういうときはとてもうれしい。アマゾンの古本で売られていない本も少なくない。それで図書館に調べに行く。図書館にもなければ古本屋をあさる。そうした一連の作業が楽しいのである。<以後略>

 

序章 ユートピア時代の東京「社会散歩」

1 イギリス田園都市の発想は飛鳥山からだった!?

2 葛飾区 町工場と『綴方教室』

3 足立区 戦後アメリカの明るさを伝えるおもちゃとお菓子

4 大田区 リゾートとしての開発と理想の工場建設

5 荒川区 温泉と遊園地と光の球場

6 板橋区 お殿様のテーマパーク・加賀藩下屋敷

7 杉並区 田園に響いた銃声と軍靴の音

8 練馬区 豊かな自然に抱かれた芸術家の卵たち

9 豊島区ほか 芸術家村と郊外のコロニー

10 国立大学町 近江と多摩を結ぶドイツの田園都市

あとがき 人間史としての都市史