森本あんり、反知性主義、新潮選書、2015.2.20

 

目次

1 ハーバード大学 反知性主義の前提

2 信仰復興運動 反知性主義の原点

3 反知性主義を育む平等の理念

4 アメリカ的な自然と知性の融合

5 反知性主義と大衆リバイバリズム

6 反知性主義のもう一つのエンジン

7 「ハーバード主義」をぶっとばせ

 

題名に惹かれて読みだした。アメリカのキリスト教史が語られる。題名に期待したのと関係なく、話がはじまるのだが、まことに、面白い。アメリカ映画もたくさん紹介される。

 

P85:キリスト教に限らず、およそ宗教には「人工的に築き上げられた高邁な知性」よりも「素朴で謙遜な無知」の方が尊い、という基本感覚が存在する。

インテリだけがわかるようでは困る。それに触れれば誰もが理解できるような真理でなければならない。

  P87:「あの人は熱心(enthusiasm)だ」というのは、「あの人は常軌を逸した危険人物だ」という意味だったのである。

 P89:詐欺師をアメリカでは「コンマン」(conman)と呼ぶ。その語源はconfidenceつまり「信頼」だが、他人の信頼を逆手にとって偽物を売りつける連中のことである。

 P118:アメリカでの政教分離は各人が自由に自分の思うままの宗教を実践することができるようにするためのシステムである。この自由は、国家が特定の教会や教派を公のものと定めている間はけっして得ることができない。

 P123:Big Government, Big Mistake

P125:権力への根深い疑念をもつ反知性主義。

 P136:エマソンの反知性主義

彼にとって理性とは、詩と夢と芸術を本領とし、道徳や宗教の真理を直観する能力である。実験や照明などという科学の手法は、理性にとって有害でしかない。実験や証明などという科学の手法は、理性にとって有害でしかない。人間は経験科学や歴史的伝統によらず、自分自身の直感だけに依拠して神と自然を見つめ、宇宙との原初的な関係性を悟る存在なのである。

 P137:都市は「分別と策略のすみか」だから、エマソンはハーバードのような知識人の集まる都市を嫌悪する。

 P141:反知性主義の本質は、このような宗教的使命に裏打ちされた「反権威主義」である。

 P264:学者が大企業や政権から資金を得て研究を進め、原子力政策やその安全性に関する世論操作に加担し、消費者運動や反公害運動を抑制する役割を果たすなら、それに批判の目を向けるのは、ある面では健康なことだろう。

 P265:今日の反対は、科学そのものよりも、科学が権力と結びついていることに向けられている。

 P154:アメリカの大統領は、頭がよければつとまるというものではない。反知性主義が大統領選挙を左右するのもそのためである。「反知性主義」という言葉は、1952年の大統領選挙を背景にして生まれたものである。当時の共和党候補アイゼンハワーは、ノルマンディー作戦を指揮した将軍としての名声で立候補したが、知的には凡庸で、プリンストン大学卒業の優秀な対立候補スティーヴンソンにはとてもかないそうになかった。本人も政治には無関心で、投票したことすらなかったという。しかし大衆は、アイゼンハワーの親しみやすさを好んで「アイ・ライク・アイク」を連呼し、彼の圧勝という結果になる。「知性に対する俗物根性の勝利」と言われた反知性主義の高潮点である。21世紀になってジョージ・W・ブッシュが2度の選挙に勝ったのも同じ理由からであった。知的優秀さの際立つ対立候補に比べて、彼が「ビールを飲みながら気軽に話せる相手」と見なされたからだと言われている。 

 

Reference:

アメリカの反知性主義(ホーフスタッター著)

オースティン

 映画

「ペーパー・ムーン(聖書を売りつける詐欺男と母親を亡くした9歳の少女の旅)1973」「テイキング・サイド(ベルリン交響楽団の名指揮者フルトヴェングラーを描写)2001

「エルマー・ガントリー 1960

「リバー・ランズ・スルー・イット 1992」、

AMISTAD(アミスタッド号事件を題材にした映画)1997