坂村健、変われる国・日本へ、イノベート・ニッポン、アスキー新書、2007.3.27
を読み始めました。先日の先輩の講演で坂村健さんを知りました。
「マッカーサー大戦回顧録」に、占領政策として、軍事力の粉砕、戦犯の処罰、代表制による政治形態、憲法の近代化、自由選挙、婦人参政権、政治犯の釈放、農民の解放、自由な労働運動、警察による弾圧の廃止、新聞の育成、教育の自由化、政治権力の集中排除、宗教と国家の分離、が語られています。
これらが、戦後のイノベーションで有ったと思います。その後の動きもとらえ、今の時代を認識し、どうしていくべきかの方向性を考えることは、坂村さんのいうイノベーションの一例だと思います。読書の連携がはかれました。
ともすれば、小手先の対処療法で済ませてしまうことが日常で、所与に従うことに慣らされている自分を見直す機会でもあります。
メモ:
P20、
イノベーションとは「技術革新」と訳されるが、技術よりもむしろ制度や仕組みの革新が中心として考えられた。
P21、
イノベーションとは、これまでのモノ、仕組みなどに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすこと。
イノベーションとは「これからの日本をどうしたいのか」ということをあらゆる分野で考えていこうという取り組みなのです。
P131
日本で個人の所有物として家を建てる場合、「国土のなかで公共のものとして役に立っている」などと考える人は皆無に等しいはずです。「自分の家は自分のものだから好きにやらせろ」となるばかりで、挙げ句の果てにそういった犠牲も払わずに、「街並みが汚い」など文句を言い出す始末です。公共の利益と個人の権利のバランスーという議論について、日本人は本当に苦手なのです。
P132
私は「形だけ、部分だけを取り入れるようなイノベーションはやめろ」ということを言い続けてきました。日本が輸入した制度や仕組みを見ていると、そういう「いいとこ取りのイノベーション」による失敗が実に多くみられます。例えば、昨今の会社の経営スタイルや会計手法といったさまざまな場面で、米国のイノベーションを無批判に形だけ取り入れたものがいくつあるのか。
P135
TOEFULのようなコンピューターで、どこででも、何度でも受けられる標準的な日本語力認定システムが用意されていないことが問題なのです。
P136
日本が抱えている問題がいったい何なのかもわからず、ただ闇雲に「鉄腕アトムのようなロボットを作る」というような夢を語っていても仕方がない。だからこそ、ケース・スタディを繰り返し見ていくしかない。それが問題解決に向けた近道としか言いようがないのです。
目次:
第1章 イノベーションとは何か
日本は世界と戦えない/イノベーションとは「これからの日本をどうしたいの
か」/少子高齢化社会に必要なイノベーション/アメリカにGoogleが生まれた理
由/日本の技術力を活かす道 ほか
第2章 イノベーションが日本を変える
日本の現状を把握する3つのポイント/イノベーションは技術だけではない/世
界の「フラット化」なんてあり得ない/仮想と現実をつなぐユビキタス・コン
ピューティング/安全・安心のための技術開発基盤をつくる ほか
第3章 ケース・スタディ型社会を目指して
日本はなぜ競争を避けるのか?/技術力だけではない日本と世界の差/イノベー
ションに莫大な予算をつぎ込むアメリカ/見てくれだけアメリカの真似をす
る日本/ケース・スタディの繰り返しが問題解決の近道 ほか
付録 ユビキタス・コンピューティングの現在