山口周著 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 光文社新書、2017.7.20
メモ:
1.論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある/①多くの人が分析的・論理的な情報処理を身につけた結果世界中の市場で発生している「正解のコモディティ化」、②分析的・論理的な情報スキルの「方法論としての限界」
2.世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある/精緻なマーケティングスキルを用いて論理的に機能的優位性や科学競争力を形成する能力よりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になる。
3.システムの変化にルールの制定が追い付かない状況が発生している/変化の早い世界では、ルールの整備はシステムの変化に引きずられる形で、後追いでなされることになります。そのような世界においては、クオリティの高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけをよりどころにするのではなく、内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められることになります。
「アート」は、組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ステークホールダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出します。
「サイエンス」は、体系的な分析や評価を通じて、「アート」が生み出した予想やビジョンに、現実的な裏付けを与えます。
そして「クラフト」は、地に足のついた経験や知識を元に、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出していきます。
「帰納」は「アート」、「演繹」は「サイエンス」、両者を繋ぎ、現実的な検証「クラフト」。「デザイン」と「経営」の共通点=エッセンスをすくいとって、あとは切り捨てる、「選択」と「捨象」。
「ビジョン=これから向かう場所を視覚的にありありとイメージが湧くように記述したもの」には理性でなく感性が。
イノベーション/ストーリーと世界観
ソマティック・マーカー仮説/適時・適正な意思決定には、理性と情動の両方が必要であるとする仮説
セルフアウェアネス/自分の状況認識、自分の強みや弱み、自分の価値観や志向性など、自分の内側にあるものに気づく力、。
「悪とは、システムを無批判に受け入れること」(ハンナ・アーレント)システムを相対化すること、システムを修正できるのはシステムに適応している人だけ
VTS(Visual Thinking Strategy)で「見る力」を鍛える。
レッド・オーシャン:経営学の用語で、血で血を洗うような激しい価格競争が行われている既存市場のこと。
VUCA: Volatility(不安定), Uncertainty(不確実), Complexity(複雑), Ambiguity(曖昧)
マインドフルネス:過去や未来に意識を奪われることなく、いまの、ただあるがままの状態、例えば自分の身体にどんな反応が起きているか、どのような感情が湧き上がっているかなどの、この瞬間に自分の内部で起きていることに、深く注意を払うこと。
コンピテンシー:類い希な実績を残した人に共通して観察される行動や思考のパターン。
誠実性のコンピテンシーを高い水準で発揮している人は、外部から与えられたルールや規則ではなく、自分の中にある基準に照らして、難しい判断をしている。
目次:
忙しい読者のために
本書における「経営の美意識」の適用範囲
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意響
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?