橘玲、朝日ぎらい <よりよい世界のためのリベラル進化論>、朝日新書、2018/6/13
昨今は、シベリア抑留や軍隊や空襲の経験など戦争の実体験者、その中には、平和を願うヒューマニストや、敗戦体験者としてモノを言わない人の両者がいると思うが、その人口が少なくなってきて、冒険主義に容易に傾く世代に代わってきたことにもよると思う。
メモ:
P65: ネット世論の主旋律には、社会的少数派や弱者に対する強い苛立ちが脈打っている。
P89: 正義は快楽である。
P100: 右派論壇が影響力を強めた理由は広範なマーケットを開発したことだった。これは歴史問題や政治論争を「エンタメ化」したということである。
P107: 戦後の「朝日」的なリベラルはずっと、「愛国=軍国主義」を批判してきた。その結果、「愛国」は右翼の独占物になり、リベラルは「愛国でないもの」すなわち「反日」のレッテルを貼られることになった。
P120:世界的にリベラル化が進む中で、「戦後民主主義」の価値観を“保守”しようとする“ガラパゴス化”した日本のリベラルはネオリベ(新自由主義)から守旧派と批判され、その一方で「日本人アイデンティティ主義者」からは、「反日」のレッテルを貼られてバッシングされる。「朝日ぎらい」は、リベラル化とアイデンティティ化という現代社会の2つの大きな潮流から説明できる。
P143:4つの政治思想、自由主義・平等主義・共同体主義・功利主義。
P149:サイバーリバタリアン(カリフォルニア・イデオロギー)、テクノロジーのちからを利用して社会を最適設計すればいいと考えるもの。
P159:保守派の政治的主張は、「安全」「公正」「自由」「共同体」「権威」「宗教」の6つの「道徳の味覚」を持つ。対してリベラルは「安全」「公正」「自由」の3つしか「道徳の味覚」をもっていない。(道徳心理学者ジョナサン・ハイト)
P170:「安部一強」の秘密。1,国際社会では「リベラル」、2,若者に対しては「ネオリベ」、3.既存の支持層に対しては「保守」、4.日本人アイデンティティ主義者に対しては「ネトウヨ」。
P176: 現代社会の価値観と、進化の過程でつくられた無意識の感情が整合的であるとはかぎらない。
P185: 「きれいごと」をいうひとが常に弱者にやさしいわけではない。
P203: 経験への開放性が高い人=ネオフィリア(新奇規好み)
低い人=ネオフォビア(新奇嫌い)
P222: 匂いが私たちの(無意識の)判断に大きな影響を与えている、恋人択びにも大きな影響を与えている。民主党支持の男性はリベラルな、女性とデートし、保守的な女性は共和党支持の男性と家庭を作りたいと思う。
P225: リベラルの典型的イメージは「学歴が高く洗練された(社会的・経済的)成功者」、「きれいごとをいう偽善者」
P228: リベラルの彼らは高い知能によって「良心」を利己的に使う方法を知っているからこそ社会的・経済的に成功した。だからこそ嫌われるのだ。
目次:
【PART1】 「リベラル」と「保守」が逆転する不思議の国
1 安倍政権はリベラル
2 リベラル化する世界
【PART2】 アイデンティティという病
3 「ネトウヨ」とは誰のことか
4 正義依存症と愛国原理主義
【PART3】 リバタニアとドメスティックス
5 グローバルスタンダードの「リベラル」
6 「保守」はなぜ「リベラル」に勝つのか
【PART4】 「リベラル」と「保守」の進化論
7 きれいごとはなぜうさん臭いのか
8 リベラルはなぜ金持ちなのか
エピローグ サイバー空間のイデオロギー戦