広井良典、持続可能な医療、ちくま新書、2018.6.6

メモ: 

P65:病院数8480に対し、診療所は約10万(2015年)、病院―診療所の配分問題。

P66:開業医の年収約2887万円。病院勤務医のそれが約1488万円。

P85:第3の道、高齢者ケアの領域などで、その人の、人生全体にさかのぼりながら、様々な特技や技能、経験など、その人の持っているプラスの面や可能性を発見し、引き出していこう。という考え方。

P97:全産業平均の31.4万円、サービス業全体の27.4万円に対し介護分野は23.8万円となっている。(2016年)

P98:東京都の65歳以上の高齢者の数は、2010年の268万人から2040年には412万人と、144万人も増加することが推計されている。

P124:他社との相互作用や社会的な関係性こそが人間の脳の形成や機能にとって本質的な意味を持つ「ソーシャル・ブレイン」

P138:子供と高齢者は地域密着人口と呼べる存在。

P176:失業率が高いのが、高齢者ではなく、10代後半から30代前半の若年層である。

P178:「個人のチャンスの保障」ということは、“自由放任”によって実現されるのではなく、そこには一定の制度的対応が必要になってくる。

P180:日本の社会保障費はすでに年間115兆円という規模に達しているが(2015年)、社会保障全体のほぼ半分(48%)は年金であり、実に55兆円に及ぶ。

P184:高い所得の者ほど高い年金がもらえる

P188:収入よりむしろ金融資産(貯蓄)や土地等の格差のほうがずっと大きい。

P203:福祉思想の空洞化

P205:江戸時代における二宮尊徳などの思想や、当時日本の各地に広く存在した「講」のネットワーク、そうした個々の集団を超えた相互扶助の仕組みとその原理となる思想が当時の日本社会に浸透していた。明治の中央集権化の中で忘れられていったが、そのDNAは震災後の様々な動きなどを含め日本社会に残っている。

P209:死亡急増時代と「死生観(わたしはどこから来てどこに行くのか、)の空洞化」

P211:死生観:「わたしはどこから来てどこに行くのか。」

「私の生そして死が、宇宙や生命全体の流れの中で、どのような位置にあり、どのような意味をもっているか、についての考えや理解」

P218:生を高らかにうたう近代的な思考が、死に対しては、それを完全な敵として断固として立ち向かう発想を基本的に持っていた。

P218:老いのプロセスの中で、肉体や精神のゆるやかな衰えとともに、徐々に死を受け入れ、和解し同化するという見方。

P235:21世紀は世界人口の増加の終焉と人口高齢化の世紀となるだろう。

 

目次:

はじめに 「持続可能な医療」への視点

1章 サイエンスとしての医療医療技術の意味するもの

2章 政策としての医療医療費の配分と公共性

3章 ケアとしての医療科学の変容と倫理

4章 コミュニティとしての医療高齢化・人口減少と地域・まちづくり

5章 社会保障としての医療「人生前半の社会保障」と持続可能な福祉社会

6章 死生観としての医療生と死のグラデーション

エピローグ グローバル定常型社会と日本の位置