松浦武四郎原著、更科源蔵・吉田豊訳、アイヌ人物誌、2018
解説より、
「近世蝦夷人物誌」には、アイヌ民族の姿をありのままに伝えることで、言葉や文化が異なるアイヌの人々のことを和人に正しく理解してもらうことや、アイヌ民族への横暴や非道な行為に及ぶ商人や役人の実名を挙げ、このような社会のあり方で良いのかを世に問いかけ、状況を改善していこうとするとともに、松前藩政から幕府直轄地となったことへの効果を強調することで、松前藩への復領を阻止する狙いがあったと考えられる。
<中略>
「近世蝦夷人物誌」には和人によるアイヌ民族への非道な行為が記されているため、そこにばかりに目が行き、取り上げられがちであるが、それはほんの一部であって、九十九の話には、親孝行であったり、ハンディキャップを持つ人々を支えたり、優れた技術を持つ人や、和人からの理不尽な行為や無理難題に理路整然と立ち向かっていく聡明な姿など、さまざまなアイヌの人々の姿を知ることによって、和人が教えられることだってたくさんあることを、武四郎は一生懸命伝えようとしている。
目次
解題、松岡武四郎と「近世蝦夷人物誌」更科源蔵
1、 近世蝦夷人物誌・初編、
兄弟の豪勇、兄イコトエ・弟カニクシランケ
副酋長リクニンリキ、
三女の困窮、ヤエコエレ婆・ヒルシエ婆・ヤエレシカレめのこ、ほか
2、近世蝦夷人物誌・弐編、
百歳翁イタキシリ
孝子クメロク
怪童イキツカ、ほか
3、近世蝦夷人物誌・参編、
孝子イカシアツ
烈女カトワンテ
感心な少年エトメチユイ、ほか
解説 山本命