吉見俊哉編、平成史講義、ちくま新書、2019.2.10

第1講 昭和の終焉 p15

38:失われた者たちへの鎮魂は、一時の行為や言葉で贖えるものでなく、一人ひとりが長い年月をかけて戦地(や被災地)に思いを寄せ続けていくことによってでしかないという自身の言葉を、天皇になってからも誠実に実行し続けた。

天皇と皇后のこの30年間の挑戦への国民的共感があった

参考:五百旗頭真(いきおべまこと)著、米国の日本占領政策、1985、(第一次世界大戦後の対独政策の失敗など、)

 

第2講 「改革」の帰結 p41

61:「国会は野党のためにある」という姿に近づいた

 

第3講 官僚制・自治制の閉塞 p69

70:大正デモクラシー、「でも暗し」

82:「漢方薬」としての行政手続き、情報公開は「劇薬」といわれた。

95:大阪府市合(ふしあ)わせ勢力、

96:小(しょう)鳩山内閣

97:ふるさと納税制度は、国レベルで地方財源を保証することなく、自治体間で税源を奪い合う仕組である。

 

第4講 会社の行方 p101

131:戦後日本社会が創り上げてきた「日本型雇用」の価値を再発見するという方向ではなく、強大な国家権力によって直接的に人々が救済される方向へと、大衆社会を誘うこととなった、、、人々の窮乏化が進行しているにもかかわらず、国家へと救済を求める志向性にとどまる気配はない。

 

第5講 若者の困難・教育の陥穽 p133

146:「ニート」って言うな!

157:「能力」がないやつはどうなろうと知った事ではない。

 

第6講 メディアの窮状 p159

160:日本の近代メディアの発達史の有力な牽引役として、常に新聞資本が存在してきた。

182:情報接触のカスタマイズ化。 メディア利用者は、自らが好む情報のみを選択し、自らには直接的に関係はないけれども、同じ社会で生活するのなら共通認識として知っておくべきという情報からは、遠ざかる傾向が強まっている。メディアの社会統合の機能を後退させ、逆に、社会の分断化を促進する局面すら増えてきた。

「フェイクニュース」というコトバに象徴されるように、各観性や合理性、真実性を棚上げし、ある特定の層にとって都合の悪い情報を切り捨てる傾第向すら見られる。伝統的メディアが担ってきたジャーナリズム機能や、異なる複数の意見を可視化し、討議させる機能が軽視されるようになってきている。伝統的なマスメディアの社会的存在意義が問われている。

 

第7講 平成リベラルの消長と功罪 p185

216:リベラル派知識人といわれるひとたちが、(中略)責任を構造的デフレの直撃を食らったロスジェネ世代に転化して涼しい顔をしている清貧の思想を説いているうちに、安保法制も日韓合意も衆院選挙も自民は勝ち続けています。

 

第8講 中間層の空洞化 p219

233:郊外社会化とは、自動車の普及と道路の整備がもたらした情景の変化のこと。

同時にそれは、住宅の大量生産、物の大量消費、さらにはチェーンストア理論に示されるような大量流通による社会の変容である。大量生産技術が社会へと浸透していくことを通じて登場する新たな問題である。

参考:三浦展(あつし)、ファスト風土化する日本―郊外化とその病理、新書、2004

       :国鉄の5方面作戦(東海道、中央、東北、常磐、総武)

  :国道、高速の整備(中央環状、環7、環8、外郭、16号、圏央道)

 

第9講 冷戦の崩壊 p245

251:在日米軍基地問題は50年代には日本本土でも極めて重要な論争点であった。内灘闘争、砂川闘争など反米基地運動は高揚し、相馬原(そうまがはら)事件では米軍への批判が極めて高まった。しかし、在日米軍のうち地上兵力の多くが本土から引き揚げ、「関東計画」など基地の整理・縮小が行われたことで、本土住民の多くは基地の存在を忘れてしまった。

 

第10講 アメリカの後退・日本の漂流 p275

286:グローバルなバブル経済はやがて破錠を余儀なくされる。アメリカ政府はこれらの危機に直面し、「多くの途上国が破産しているという基本的事実を否定」させる策略を編みだしていく。

295:戦後日本は帝国としてのアメリカに近づき、その一部となることで、自らが帝国的な中心性から疎外されることを必死で免れた。

297:日本人の間には、これまでの親米一辺倒とは違う流れが生じてくるかもしれない。この巨大であり続ける力と対しつつも、自分自身の足元を組み立て直すことこそ必須なのだと気づくのに時間はかからないかもしれない。

  

目次

第1講 昭和の終焉 p15

第2講 「改革」の帰結 p41

第3講 官僚制・自治制の閉塞 p69

第4講 会社の行方 p101

第5講 若者の困難・教育の陥穽 p133

第6講 メディアの窮状 p159

第7講 平成リベラルの消長と功罪 p185

第8講 中間層の空洞化 p219

第9講 冷戦の崩壊 p245

第10講 アメリカの後退・日本の漂流 p275