スティーヴン・ウィット (著)、 関美和 (翻訳)、誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2018.3.10
(初出:How music got free、2015)
P163:たいていのCDはヨーグルトより賞味期限が短く、モリスは毎年何百万枚というCDを廃棄処分にしなければならなかった。音楽業界に40年間いてもなお、どのアーティストが売れるかわからなかったし、「だれにもなにもわからない」というハリウッドの格言はほかのすべてのショービジネスにあてはまった。毎年何百本もの映画が公開され、コケていた。何十本ものテレビ番組が作られては、数回で放送打ち切りになっていた。何万冊もの新刊が売れ残って紙屑になっていた。おそらく企業すべてにこの原則はあてはまり、居心地の悪い「無知の知」の状態を受け入れた者だけが、生き残ることができた。
P312:なにもかも潤沢なデジタルの世界では、利益を生むことが難しくなっていた。
人工的に希少性を作り出すこれまでのやり方は、テクノロジーの民主化によって実現が難しくなってきた。テクノロジーが人々に開放されたことで、収益を無視した協働経済が生まれるからだ。