保阪正康 昭和の怪物 七つの謎 講談社現代新書 2018.7.19

第1章 東條英機は何に脅えていたのか

19 東條人事は問題が多かった。私情がらみの人事、諫言の士より服従の部下、自分の言い分に一切口を挟まない幕僚、そういう人物が中枢に座ったことが問題であった。

20 東條にとって、客観的データを伴った報告書は、弱虫、小心者によるもので、彼らを一定のポストに就かせてはいけないという信仰があった。また、ひとたび権力を手にしたら、この国の全権力が自らに集中していると考え込む傲慢さが同居していた。

26 会議というのは、日本では、急進論とか積極論のほうがよく通る。→高速道路料金無料化の議論、維持管理費を聴取する必要はある。

28 海軍がノーと言えばよかったのに、それを言わないから戦争になった。

30 政治家は、ある特定の意見を口にしたなら、それを守り続けるべき宿命がある。でなければ、いずれは「自らの影」に脅えることになる。

33 太平洋戦争の3年8か月は、軍事上の流れを見ると、「勝利」「挫折」「崩壊」「解体」、そして「降伏」といった5つの段階を経るのだが、東條内閣は「崩壊」のあとに倒れている。

47 東條英機の非知性的な発言が「戦争は、負けたと思ったときが負け」という論であった。

 

第2章 石原莞爾は東條暗殺計画を知っていたのか

51 石原は、軍人に託された倫理などより、自分が19世紀から20世紀を生きる日本人だと受け止める。能動的に自らの生きる空間で動く。

59 昭和陸軍があまりにも俗っぽい集団と化していたかも明らかにしたい。

 

第3章 石原莞爾の「世界最終戦論」とは何だったのか

99 「日満支を中心」に、東亜の覇者の地位を固め、西欧と米が戦い、米が勝って東亜と対峙する。

102 日中不拡大方針で孤立。閣下が満州事変の時に行った主張をくり返しているだけです。→どの世代も成功を望む。

107 中国が日本に対して不信感を持っているのは、袁世凱政権に21か条をつきつけたことにある。

 

第4章 犬養毅は襲撃の影を見抜いていたのか

141 テロの犠牲になったはずの犬養家のほうがあれこれ社会的な制裁を受けることになった。

161 辛亥革命に協力した日本人の子孫がつくっている15人ほどの会 

→内山書店、内山完造、福山市児島書店、魯迅

170: 犬養道子「花々と星々と」「ある歴史の娘」「お嬢さん放浪記」

 

第5章 渡辺和子は死ぬまで誰を赦さなかったのか

172  2.26事件から80年(2016年)、渡辺和子は、事件の折に殺された父・渡辺錠太郎のもとに旅立った。

172 「置かれた場所で咲きなさい」→随所作主立処皆真

 

第6章 瀬島龍三は史実をどう改竄したのか

205  昭和陸軍の軍官僚の持っている体質、「都合の悪いことは決して口にしない」「自らの意見は常に他人の意見をかたり、本音は言わない」「ある事実をかたることで『全体的』と理解させる」「相手の知識量、情報量に合わせて自説をかたる」といった特徴。

 

第7章 吉田茂はなぜ護憲にこだわったのか

247 「戦間期の思想」とは、戦争で失ったものを戦争で取り返すという考え方。ナチス思想。

261  千島列島全体がソ連に不法に占領されているとの表現は用いていない。このあたりにアメリカ側への配慮があったということになるのだろう。→ヤルタ会談、ジョン・フォスター・ダレス、大磯の吉田邸

 

あとがき

276: タイ・バンコク、日本軍による捕虜虐待で亡くなったイギリス人の墓地。イギリス人の老夫婦の態度。→フィリピン・コレヒドール島の観光。日本人とそれ以外を分けて案内。

 

→関連図書:

孫崎享(まごさきうける)、戦後史の正体 2012

チャーチル、第二次世界大戦

五百旗頭真(いおきべまこと)、米国の日本占領政策(上下)、1985